印刷会社の涙ぐましい顧客管理

私は五十代のサラリーマンですが、東京都内の或る町の小さな印刷会社に勤務しております。
この年代としては驚くべき薄給であり、私の年収など恥ずかしくて絶対に人には言えません。
印刷会社や印刷関連業界では長い不況に苦しみ喘ぐ会社が多く、特に中小零細は大変です。
とにかく一日も早い景気回復を、日々、祈るばかりです。

そんな我が社にも顧客管理の制度はあります。
しかし、その多くは無料で使える顧客管理ソフトを利用しただけのシンプルなものに過ぎません。
しかし、社員一人一人の顧客に対する思いは、そんなソフトでは伝えることはできないと思います。
実際、我が社では全社員が涙ぐましいような努力をして、顧客の管理を行っているのです。

たとえばお得意さんの会社であれば、それは会社単位の管理だけではなく、その得意先の会社の全社員をきめ細かく網羅したような管理を手作業などでも行っているのです。
たとえ名刺の一枚でもすぐに注文に応じることができるよう、常に準備を整えています。
「営業部の人たちはそろそろ名刺が切れる頃だな」と思えば、事前にメールや電話でご挨拶したり、営業に出向いたりして注文を漏らさないようにするのです。
また、「役員のあの方の名刺が、そろそろ無くなる頃だ」という時には、こちらから先手を打つ営業アクションは、絶対に欠かすことはできないのです。
なぜなら、そのように時には特定の個人の名刺の在庫状況さえ管理する努力が、思わぬビジネス・チャンスを生み出すこともあるからです。
その名刺一枚を足掛かりにして、次の新たな仕事を請け負うことができるようにもなるからなのです。

会社の売り上げ的に見るならば、確かに名刺一枚くらいでは何の足しにもなりません。
空しい努力のように思えることも少なくありません。
しかし、その一枚の名刺印刷の受注の後ろには、大口の印刷物の注文が控えているのかもしれないのです。
我が社の顧客管理は、正にその背後に控える大口の仕事を逃さないためのものであるということなのです。
それは手間暇のかかる、実に涙ぐましいような努力ではないかと私は自負しています。
しかもその努力の大部分は、実りの無い空回りに終わってしまうものです。
しかし、その中の僅かな努力が、いつか大きな実を結んでくれることもまた、確かな事実なのです。
その僅かな実りを求めつつ、我が社のような中小零細の弱小企業は、これからも地道な顧客管理をし続けるのです。
そうでなければこの先、生き残ることはできないのです。

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